アルプス、そして新潟と関東、信越の県境の山は雪が降りはじめ、
冬がすでにはじまっています。
でも東京、埼玉、山梨の境にある奥多摩の山々は、まだ秋。
その秋を感じに、今回登ったのが「七ツ石山」です。
七ツ石山は、その奥に佇む標高2017m、東京都最高峰の「雲取山」の前衛、
つまり雲取山登頂をするために通過、または脇を巻いて行く山として見られています。
山頂からの眺望は素晴らしいのに、ちょっと可哀そうな山なんです。
標高は1757m。スタート地点の鴨沢の標高が約550m。標高差約1200m。
標高599mの高尾山はスタート地点・高尾山口駅からの標高差が約400m。
標高、標高差ともに、単純に比較する3倍。
登山地図のコースタイムだと往復5時間45分。
そこで、ビギナーの足なので休憩も含めてゆっくり往復7~8時間を想定。
ちょい山CLUBがツアー・イベントをしている
NEXT高尾山の山としては、ちょっとキツい山なのです。
でも登りの2/3は、なだらかで歩きやすく、
七ツ石小屋、そして七ツ石山山頂からの富士山の眺望は、
山頂が広く、平らで見やすいことも考えると
奥多摩で一番だとボクは思っています。
だから、頑張って、秋の紅葉を楽しみながら、登ってもらうことにしました。
スタート地点は、奥多摩駅からバスで約40分の鴨沢バス停。
キレイなトイレもあって、バス停からすぐに山に入っていけます。
そしてバス停は奥多摩湖の湖畔。まだ紅葉には早かったけれども、秋の光がキラキラと輝いていました。
トレイルは、はじめ杉の植林です。
でも秋のやわらかな光が林の奥まで射し込んできて、
心地よい世界を見させてくれます。
花粉症、そして人工林の悪いイメージが強いですが、
時に、人工的な自然だって、美しさを醸してくれるのが
自然の奥深いところだと思うのです。
奥多摩の山のなかには、いくつも集落がありました。
今、そのほとんどは廃村となり、朽ち果てた建物や石垣だけが残っています。
七ツ石山へと向かうトレイルの途中にも、ほんの少し前まで人々が暮らしていた
痕跡が残っています。
朽ちた建物にボクらが近づくと、森がザワつきはじめました。
まるで子供たちが大声をあげて遊んでいるような声も聞こえてきました。
それは猿の群れでした。
建物のまわりに往時の山人が植えたカキを食べに来ていたようです。
建物から落ちた窓からボクらを見つめる猿、
高い木の上を移動しなが食べかけのカキを落とす猿、
枯れ葉に埋もれた地面をゆっくりと進むボスと思しき大きな猿。
しばらく彼らを見ていたボクらが建物から遠ざかると、
ふたたび子供たちがじゃれ合うような大きな声が森に響きました。
「ニンゲンは行ったか」
「ニンゲンは不思議だな、みんな枝を持って歩いてる」
「それにしてもニンゲンは、どこ行ってもいるな」
「オマエら、ニンゲンみたいに一列で歩くなよ」
「なに言ってる! オマエなんか、あのニンゲンみたいな顔してるぞ!!」
集落後の近くにあった祠。登山地図上には羽黒神社とあった。
登山道途中の水場。夏、暑い季節のハイクの際には、とてもありがたいところ。
薄暗い植林の森でひときわ目立つ、赤い実をつけて植物。ウラシマソウか?
春は食虫植物のウツボカズラのようなカタチの花を咲かせる。
調べてみると、夏、この実は緑で、トウモロコシと誤食して中毒に陥るヒトがいるそう。つまり毒があります。花もそうですが、実も怪しい美しさがあります。
標高が1000mを越えてくると、杉の植林はなくなり、広葉樹の森になってきました。
春の瑞々しい碧、夏に溢れる生命の濃さ、冬のすべての音を包み込む静けさもよいですが、山をハイクするなら秋が好きです。
やってくる寒さに山全体が備えているキリリとした緊張感に、はっきりとした四季のなかで生き抜いてきた日本人の奥深い場所にあるなにかが刺激され、生きてきた、そして生きているんだという野性を感じるから。
それは侘び寂の「寂」の心持ちなのかもしれません。
だからなのか、こういう景色がそこかしこにある秋が好きなのです。
この風景に「生」を感じるのです。
華やかな彩りには、静かな寂しさもあります。秋です。
そして富士山。大陸からやってくる冷たい空気は日本海側の山に雪を降らせ、
乾いた空気が太平洋側を吹き抜けて、一瞬の彩りの向こう側に富士山の姿を見させてくれます。
上の写真の富士山が見られる富士見の七ツ石小屋は、今年村営となったそうです。
スタッフさんのブログにあった、スタッフさんが交換したという雲取山と飛龍山の古い山頂標識が、小屋の裏にありました。
七ツ石小屋のテント場で、ランチ。
いつもの通りジェットボイルで湯を沸かして、カップ麺とお茶。
参加者さんの分も、ボクが背負ってきた水を使って、沸かします。
今回、高尾山以外は登ったことがないという方がいらして、ゆっくり登ってきたのですが、七ツ石小屋の富士山の美しさで十分と山頂行きはキャンセル。
天気もよく日向ぼっこもできる状況。小屋のテント場ということもあり、本来、参加者さんをひとりにすることはありませんが、今回は特別に。
エマージェンシーシートを渡して、もし寒かったら包まってもらうことにして、他の参加者さんはバックパックを置いて空荷で山頂へ。
そして下山。下りとなると意外と元気になれます。
でもカラダへの負担は登りより強いので、できるだけゆっくりと。
やがて空は染まりはじめ。
最後の20分は用意してきてもらったヘッドライトでナイトハイク。
その途中、西の山の端に三日月が!
秋の晴天。
低山ハイクに、これ以上のジカンはありません。
寒さに対処したウエアリングをきちんとしなければなりませんが、
暑さにヘバることもなく、吹く風の冷たさは強い木枯らしでなければ
カラダに心地よいものです。
そして紅葉に染まった山は、今日という二度とない1日を
より一層忘れられない1日にしてくれると思うのです。
それは秋の風景の持つ、魔法に思えます。
七ツ石山までの長いアプローチは、
ビギナーにはちょっとキツかったですが、
たくさんの秋の風景を見られる、
美しく、記憶に残る時間でした。
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押しても飛びません・・・すみません。