贅沢ってなんなのだ?
春は淡い彩りとやわらかな光でボクらに語りかけてきました
よく干された落ち葉の布団でゴロ寝していると
芽吹いた緑の鮮やかなブナの木の高いところから
シジュウカラが歌声にのせて教えてくれました
ケンキョ、ケンキョ、ケンキョ、ケンキョ、ケンキョ
キセキ、キセキ、キセキ、キセキ
あまい香りのするお日様の光は
すっかり寝息をたてはじめたボクの瞼の裏のスクリーンに
ぼんやりとほのかに光るものを映し出しました
キミが美しいと思うものを見せたよ
お日様はさわやかな風に
そうコトバをのせると
間もなくして薄い雲の暖簾をおろして
ボクと同じように昼寝をはじめました
まどろみのなかで
コトバがゆっくりと踊っています
ボクが美しいと思うもの・・・ キセキ・・・ ケンキョ・・・ 贅沢・・・ 耳元でカサカサカッサン、コソコソコッソンと
なにかが移動している音が聞こえてきました
今日はどこまでいこうかな
そうなにかが呟いたような気がした瞬間
あっ、なんだ、そういうことか! と気が付きました
ボクはすっくと起き上がって
それら全部が詰まっている
つまり、美しいもの、謙虚、奇跡、または軌跡、そして贅沢
それらが全部詰まっている
この旅の続きをはじめるため
ふたたび歩きはじめました
そして歩き出してすぐに出合ったもの
それが岩陰でぼんやりとほのかに光る
ニリンソウでした