『ちょい山CLUB』

低山ハイクとヨガをMIXしたツアー・イベント『ちょい山CLUB』の主宰ライター・ポンチョの日記

登山をはじめたい、ひとりで登るのは不安 ・・・という山好き初心者を対象にした、首都圏近郊の低山歩きとヨガをMIXしたツアー・イベントです。 初心者の方を事前準備からサポートし、登ってみたいと思っていた山に一緒に登り、見たことのない風景、木々や山々との一体感を味わえる、ツアー・イベントを提供しています。 参加申込後、山歩きで揃えるべき基本的なウエアや道具、今持っている道具は使えるの? など、選び方の基本やアイテムの解説・リストをお教えする【お買い物相談】の特典が付きます! ひとりでは楽しめないと思っていた山を『ちょい山CLUB』で存分に楽しんで下さい!

越後カントリートレイル・完走レポート

案内人のPONCHOです。

6月17日(日)に参加した、新潟県・小国で開催された

越後カントリートレイルという

トイレイルランの53キロのレースに参加してきました。

今回はそのレースについて。

 

ラソンやトレイルランは個人競技なので、

自分ひとりのチカラが試されるものだと思いがちです。 

でも実際にはそんなことはなくて、沿道の応援、

知り合いの笑顔、そして同じようにゴールを目指すランナーから

たくさんのチカラをもらって、

よいパフォーマンスを発揮できるんだと思うんです。

越後カントリートレイルでも、そんな経験ができました。


5キロ地点の最初のエイドを過ぎたところから、
登りになると競歩のような動きで上下動を少なくしたボクの方が速く、
下りになると遅いボクを抜かしていく男性ランナーがいました。


とはいえ下りでは彼だけでなく、女性ランナーも含めて
たくさんのランナーにボクは抜かれます。
そんな中で顔が早くも真っ赤で、

飛ばしすぎて熱中症にならなければいいなと思ったのが彼でした。

 

20キロ地点のエイドでは、彼の方がはるか前方。
昨年、暑さでほとんどスピードを出せなかった
33キロ地点のエイド手前4~5キロ程の緩い傾斜の林道とロード。
今年はこの区間をできる限り速いペースで走り続けようと想定。

それを実行でき、いつの間にか差を詰めていたようです。

33キロ地点エイドを出発して、しばらく続くロードで彼に追いつきました。
その後のアップダウンの舗装林道では
登りでボクが前に出ますが、下りではあっという間に彼に抜かれます。
それを3回程繰り返したと思います。


でも長い下りで彼は先に行き、
43キロ地点のエイドでは姿は見えませんでした。

 

最後のピークの八石山はロープ場が続く急登。
先に頂上から戻ってくる彼とすれ違った時には
およそ10分程の差がありました。

急登でヘロヘロになっていたボク。

一瞬、「もうダメかも・・・」。

そう思って、立ち止まりそうになりました。
「いやいや、後は下りしかないじゃん!」

そう思いなおしただけで
カラダが動くようになりました。

「脳ミソはウソをつく」、

これまで参加してきたトレランレースでも

何度も何度も騙されてきた脳ミソが生み出す誘惑。

「騙されるな。まだ動ける。この状況を笑え!」。

すぐ近くを走っていたランナーも気にせず、

大声で自分に叱咤激励しました。
登りの足はもう残っていませんでした。
ですが、温存していた下りの足はまだ残っていました。
昨年は激しい膝の痛みが出て

歩き下ることも苦労した急な下り区間

その反省を生かし、この区間まで下りのスピードを抑えてきたのです。
狭い歩幅で、速さではなく、足の運びのリズムだけを意識しました。

おかげで昨年、20人近くに抜かれたこの区間で、

誰にも抜かれません。

 

単純なボクはそれで気をよくしました。

ゴールまで残り5キロ地点、最後のエイド。
かぶり水だけを掛けてもらい、

給水せずに、すぐに出発。

トレイルと林道。緩やかなアップダウン。

登りでも歩かず、最初から続けてきた競歩のような早歩き。

よし、いいぞ。まだ動けるぞと思ったところで
彼の姿が、突然背後から現れました。

「えっ、なんで!?」
たぶん最後のエイドで休んでいた彼を、

ほぼ休まなかったことで抜いていたようです。

しかしロードの足は、まだ残っていました。
しばらく並走し集落に出たところで

沿道の応援の男性から

「残り2~3キロ!」

だという声を聞いて、スピードを上げました。


直線道路で振り返ると

彼の姿は小さくなっていました。

でも応援ポイントに掲げられた表示を見てガッカリ。
「残り2.3キロ・・・」。

残り2~3キロという声は、間違いでした。

気力は削がれ、もう足が動かきません・・・。
みるみるスピードが落ち、振り返ると彼の姿が大きくなってきていました。

 

しかしゴール手前のコースが昨年とは変わっていました。
急なロープ場を登り、トレイルに再び入ります。

「こんな嫌がらせあり?」

笑いながら誘導スタッフに話しかけると

「あと、ちょっとです。頑張ってください!」

・・・あと、ちょっとからが、長いんだよねと不平がよぎりつつ、

「ありがとう!」

 

動かない足を必死に動かし、先行するランナーに追いつきましたが、
気が付いたそのランナーはスピードアップして、すぐに見えなくなりました。

背後には、追い込んできている彼の気配・・・。

 

「動け! スマイル! 大丈夫! 楽しめ!」

レース中に何度も口にした言葉を

まとめて全部大きな声に出して、自分を叱咤。

彼をメチャクチャ意識しながら走ってきましたが、

彼より先にゴールすることが目的ではありません。

「よくやった」

と諦めて、歩いて、抜かれて、それでも

「頑張った」

と自分にウソをつくことが、なんとしてもイヤでした。

 

結果、8時間43分59秒。

昨年は8時間52分52秒。

今年は昨年よりもさらに暑く、実際には距離も延びていたそう。

十分です。よく諦めずに走り切った! 

 

ゴール後、記録証をもらったところで直後にゴールした彼とすれ違いました。

レース中に彼とコトバを交わすことはありませんでしたが、

ボクが彼を意識していたのと同じように、彼もボクを意識していたようです。

目が合って

「あっ、お疲れさまでした」

お互いに、そう口にしました。

本当は握手をしたかったけれど、

なんとなく気恥ずかしくて、手を差し出せませんでした。

 でも、今回は間違いなく彼のおかげで、

自分のチカラを最大限出すことができました。

立っているのもやっとで、右へ左へフラフラと傾きながら

去ってゆく彼の背中につぶやきました。

「ありがとうございました。また、どこかの山で会いましょう」