案内人のPONCHOです。
先月、ブログに投稿した羽黒山伏の星野文紘さんの
お話し会に参加してきました。
星野さんの著書『感じるままに生きなさい』を読むきっかけとなったのは
ちょい山CLUBの参加者の方が、ボクが話すこと、ブログに書くことが、
星野さんが著書に書いていることとが似ているから読んでみてと
言われたことです。
早速、読んでみて感じたことを先月、ブログにまとめました。
さて、今回のお話し会は、妻の知り合いが主催したもので、
ボクが星野さんの本を読んだばかりなことを知っている妻から
行ってみようと誘われて、シンクロしている流れのままに参加してみました。
お話し会の前半では、ボクがメモ帳とペンを持って話を聞いていると、
その姿を見つけた星野さんは、言いました。
「山伏は口伝で、つまり言葉にしないで伝えてきたものだから、メモなんて取れない」。
口伝は書物ではなく口伝えで行うものだけれども、でも言葉であることには変わらない・・・そう、考えたくなる部分もありますが、そんな些末なことはどうでもよいことで、ボクは氏から頂いた言葉から、
「なぜボクはメモを取るのか?」について感じて、考えてみました。
20年前に熊に襲われて亡くなった、ボクが今住んでいる市川市出身で、若くしてアラスカに移り住んだ動物カメラマンでエッセイストの星野道夫さんは著書のなかでこんなことを書いています。
「いつかある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。 たとえばこんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。 もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」
「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いて見せるか、 いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって。」(『旅をする木』文芸春秋)
この一説は、星野道夫さんを語るときに多くの人が引用している、とても有名なものです。ボクも20代後半でこの文章に出合い、その後の生き方に大きく影響を受けました。
この一説には、こんな文章が続きます。
「人の一生の中で、それぞれの時代に、自然はさまざまなメッセージを送っている。この世へ来たばかりの子どもへも、去ってゆこうとする老人にも、同じ自然がそれぞれの物語を語りかけてくる。」
山伏の星野文紘さんは、動物カメラマンの星野道夫さんがいうところの“メッセージ”“物語”を受信するために、魂を強くしようと、考えるよりも感じようと仰っているとボクは解釈しています。
そうすることで、つまり「魂を強くする」ことで「自分は変わる」と。
でも、山伏のような修行や祈りをしていないボクは、星野道夫さんのように野生の自然のなかで多くの時間を過ごしていないボクは、俗世にまみれて生きているので、そんなにたやすく変わることができません。
でも、変わりたい。
できる限りを感じたい。
そのために今、ボクに必要なのはメモなのです。
誰かと話した時、聞いた時にその場で、帰りの電車内でメモを取る、
自然のなか、山歩きの途中でのメモ、つまり写真を撮ることは、
話した言葉そのものをメモっているのではなく、
また山で美しい風景だけを写真に収めているのではなく、
そのヒト、その自然を間近に触れて僕自身がどう感じたか、
コトバにできなくても、
なにかを感じ取ったという瞬間、ジカンを
メモしているのだと思います。
山伏の星野さんは話していましたが、「自分の話を聞いて、面白かった! でもなにを話していたっけ?」となる人が多くいるそうで、ボクもメモをしなければそうなることは明白で、でもボクはどんなことを受信したのかを、即座にコトバにできなくても、またはその必要性がなかったとしても、「なにかを感じたぞ!」ということを、どこかで、頭やココロの片隅に残しておきたくて、メモを取っています。
そうすると、ある時、それは3日後かもしれないし、1年後や10年後かもしれないけれど、再び、そのメモったコトバやシーン、写真を見返したときに、またはふとしたきっかけから
「あの時にボクが感じていたことは、こういうことだったのか!!」
と、腑に落ちる瞬間がやって来るのです。
またそのこととはまったき違う方向に、
コトバが自然と紡がれていくことがあるのです。
だから、ボクはメモを取るのです。
最後に2006年にボクが雑誌に書いた文章を。
これも旅の最中のメモなのです。
30代後半にもなって、青臭い、子どもじみたことを思っているのです。
でも、それが自分なのだと知らせてくれる、大事なメモです。
メモには、その時のボク宛の自然からのメッセージが、残されているのです。
お金と時間を無駄遣いして誰もいない浜でテントに泊まり、
見たことのない風景に歓喜して、
1泊千円の安宿では素敵な誰かとの出会いに心躍らせる日々。
そうかと思えば、急に弱気になってこんなことをしていたらダメになる、
まわりの友人はみんなキチンとしているのに
一体自分はいつからこうなってしまったんだ、と嘆き、悩む時間。
旅はそうやって揺さぶりをかけてくる。
でも揺さぶりに耐えて、思ったことを信じ抜いた旅人は、知ることになる・・・。
いろいろな偏見や思い込み、劣等感やつまらない優越感に
どっぷりつかっていた自分自身からの解放を。
それは予定調和な旅からは知り得ることなど、絶対にあり得ない。
自分を試すように、導かれるように、漂うように旅しなければできるはずがない。
他人には言えないような失敗を幾多繰り返し、できる限りのものを見て、
感じて、考えなければ、知り得ない。
本当の旅、本当の自由、本当の自分を知るきっかけ。
よい旅を!
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