『ちょい山CLUB』

低山ハイクとヨガをMIXしたツアー・イベント『ちょい山CLUB』の主宰ライター・ポンチョの日記

登山をはじめたい、ひとりで登るのは不安 ・・・という山好き初心者を対象にした、首都圏近郊の低山歩きとヨガをMIXしたツアー・イベントです。 初心者の方を事前準備からサポートし、登ってみたいと思っていた山に一緒に登り、見たことのない風景、木々や山々との一体感を味わえる、ツアー・イベントを提供しています。 参加申込後、山歩きで揃えるべき基本的なウエアや道具、今持っている道具は使えるの? など、選び方の基本やアイテムの解説・リストをお教えする【お買い物相談】の特典が付きます! ひとりでは楽しめないと思っていた山を『ちょい山CLUB』で存分に楽しんで下さい!

『カリマー/リッジ』を背負った旅人とのモノ語り

WEBマガジンで新しくなった『カリマー/リッジ』について書かせてもらいました。

ですが、掲載されたテキスト以外に「ストーリー」的なテキストを最初に書き上げていました。WEBマガジンは「情報」的なテキストが求められるので、敢えて「ストーリー」を書いてみたのですが、予想通りボツに・・・。

でも、それなりによく書けていると思うので、このブログに載せてみます。

f:id:cyoiyamaclub:20190402184013j:plain

イギリスのバックパックブランド『カリマー』。その象徴的パックである『リッジ』。1999年に発売開始以来、熟成を重ね、変化を続けながらも、現在まで多くのハイカー、そして旅人に愛されているパックです。登山専門店で、初めてのバックブランドとしても推奨されている『リッジ』を背負っている旅人と、山だけでなく多くの旅先で出会ってきました。

 

f:id:cyoiyamaclub:20190402184741j:plain

東京から南へ1000km。小笠原諸島父島にあるツリーハウスのバーで隣り合った旅人は、スカイブルーの『リッジ』を背負っていました。それは透明でキラキラした南洋の海と空によく似合うパックでした。アーティストでもある彼女は、島の自然をモチーフにしたアイランドビーズをつくり、南の島のむせるような暑さに、美しい清涼を生み出していました。そのビーズは、ただ南の島の生命力あふれる自然を写し取っただけでなく、やさしさを感じられるものでした。

 

f:id:cyoiyamaclub:20190402184949j:plain

伊豆大島三原山、その裏砂漠へと小径自転車BD-1を走らせていたとき、ブラックの『リッジ』を背負ってMTBに乗った旅人と少しの時間、併走しました。まだ学生らしき彼は、しきりにそんな小さな自転車で大変ではないかと聞いてきました。さらに島の南にあるキャンプ場に泊まっていると話すと、今日が帰る日じゃなかったらお邪魔できたのにと残念がっていました。もしキャンプ場で一緒の時間を過ごせたら、焚き火を囲みながら、きっと一晩中、これまでとこれからの話ができただろうと、私も残念でした。でも、その後、渡した手書きの名刺の住所宛に、「短い時間だったけれど、楽しかった」と葉書が届き、旅人としての振る舞いを、若い彼に勉強させてもらいました。

 

f:id:cyoiyamaclub:20190402185206j:plain

沖縄のゲストハウスでは、きれいな黄色みがかったグリーンの『リッジ』を背負った旅人と焚き火を囲みました。それほど大きくないリッジを大荷物に見せてしまう小さな体の彼女は、なんと焚き火をしたことがなかったらしく、ワクワクするというのはこういうことをいうのだろうという表情で、夜遅くまで焚き火に薪をくべていました。そうして、これまで行った旅先で一番よかった場所はどこか? と聞かれ、あまりの雄大さに神様はいるんだ! なんて思って景色を見ているだけで泣けてきたアラスカだと話しました。すると、彼女は薪をくべながら、「アラスカかぁ」と何度も口にしていたのを覚えています。

 

f:id:cyoiyamaclub:20190402185610j:plain

インクブルーの『リッジ』を背負った旅人とも、どこかで出会いました。

いや山で出会ったことは確かなのだけれど、どこの山だったか・・・・・・。取材中だった私がアウトドアのライターなのだと気が付いた彼は、「カリマーのパックって、どうなんですか?」と聞いてきました。その時、私が背負っていたのはグレゴリーのG-pack。グレゴリーが手掛けた軽量パックの初期の頃のモデルで、ULパックに影響を受けたつくりのものでした。約50ℓ程の容量で重さは約1.2kg。彼はリッジの40ℓを背負っていて、ペラペラの素材のいかにも軽そうなG-packと比べて、質問したくなったのかもしれません。

私はこう答えました。
「カリマーも質実剛健、シンプルで使いやすいパックだと思います。でも、これからはこのグレゴリーみたいに軽いパックが主流になると思います」
彼は、すんなり納得したようで
「やっぱり軽いパックの方がいいですよね。カリマーも5年くらい背負ったから、そろそろ次のパックに買い替えようかな、軽いヤツに。でも、なんだか愛着があるんです。こういう色合いのパックって、他になかなかないので」

 

f:id:cyoiyamaclub:20190402185819j:plain

あれから15年くらい経ったと思います。私が話したように、軽量パックはすっかり浸透しました。でも2019年の今、彼に会ったら、こういうと思います。
「軽いパックも確かによいけれど、長く山や島や海外を旅して気が付いたのは、記憶に残るパックというのも、よいパックだと思います」

カリマーのパック、特に『リッジ』は、背負っている、それを選んだ旅人の人柄もあってか、とても印象に残るパックです。それは長年変わらない、いや発売以来20年以上が経ち、毎年機能は進化し、細部は変わってはいるのだけれども、シンプルでクラシカルな雰囲気はそのまま。常に旅先の風景のなかに記憶されるカラーは、『リッジ』が持つオリジナリティと言えるものです。

 

f:id:cyoiyamaclub:20190402185903j:plain

軽さやストイックな機能性を求めれば、他によいものはあります。でも、旅人の個性とリンクするカラーを纏ったバックパックって、『リッジ』くらいしか思い当たりません。2019年モデルは、グリーンやブルー、ピンクに加えてエスプレッソという茶系のカラーもラインナップ。今回、この記事を書くにあたりメーカーから借りられたのは定番のブラックでしたが、もし私が手に入れるならエスプレッソ。森の風景に浸透する茶色の『リッジ』を背負って、静かに山歩きを楽しみたいものです。そしてどこかで誰かと出会って言葉を交わすことがあったら、渋い茶色の『リッジ』の旅人と思われたら素敵だなと、夢想しています。

f:id:cyoiyamaclub:20190402190132j:plain